ユニクロ創業者の柳井正さんの著書です。
この本は、いろんな観点で読むことができると思います。キャリアアップの考え方や、女性の社会進出などについても語られています。
ここでは、主に柳井さんの売れる商品づくりについて、感想を述べたいと思います。
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ユニクロがSPAにこだわる理由
ユニクロと聞いて、どんなイメージを持つでしょうか?
多くのひとは低価格だけど、高品質のカジュアルを提供しているアパレルメーカーというイメージだと思います。それについて、柳井さんはこのように答えています。
一般的には、メーカーは作るだけ、問屋はメーカーが作った商品を小売業者に卸すだけ、小売業者は売るだけ。つまり機能的に分化している。重要な売れ筋情報も切断されていて、ほとんど伝わらない。その商品の売れ行きはどうか、お客様が売り場でどんな反応を示していたか、突き詰めると、この商品はどれくらい売れる能力があるのか、などの金の鉱脈のような重要情報を、小売業者はドブに捨てていることになる。だが、我々のようなSPAであればその情報を活かすことができる。SPAであれば原価がダウンするから儲かるという単純なことではないのだ。(p.109)
つまり、中間マージンを除くことによるコストダウンよりも、バリューチェーンを一気通貫で抑えることで、お客様から得たフィードバックを商品開発に活かせることがSPAのメリットだと書いています。
海外では、ZARAがこの手法を得意としています。SPAで狙いとするところは、ZARAもユニクロも一緒なのでしょう。
ユニクロは高品質を維持するため、材料メーカーや工場と折衝をするため、1年前から商品開発をしています。そのため、ZARAほど超スピードで最新ファッションを出して作り足すということはやっていません。
しかしながら、これから『金の鉱脈』を最大限活用するために新しい手を出してくるかもしれません。最近、自分でアウターやTシャツをデザインできる試みをやっているようですが、それもこの一貫なのかもしれませんね。
情報とともに、商品を売る
ライバルのZARAは、最先端のファッションをいちはやく組み込んで、市場にリリースすることを得意としています。最近の流行りを知るために、ZARAの店舗に訪れる人もいるくらいです。
対して、柳井さんはお客様が服を買う理由を下記のように述べています。
ぼくはファッションだけが服を買う理由ではないと思っている。機能や素材、着心地、シルエットなど、その服の持つ情報そのものを、商品と一緒に伝えて買っていただく。(p.150)
つまり、売っている服がどんな機能があるか、どんな素材なのか、どういう見た目になるのか、お客様が商品の見た目だけでなく、情報も一緒に提供している、ということです。
たしかに、大人気のヒートテックはこれを着ると暖かくなる、という効用をみんな信じて購入しているでしょう。カシミアのセーターは、これが最上級の素材であることを認知して買っています。スリムのパンツなどはCMなどを通して、これを着ればほっそりとしたスタイルをイメージしているはずです。
ファッションに興味のない私にとってはユニクロを通して知った機能や効用、素材が意外とあったりします。
分析だけでは売れない、感性も重要
ユニクロといえば、徹底した在庫管理や売価管理で店長さんたちが必死に数字を追っかけて利益を上げている印象がありました。
もちろん、それらが重要視されていることには変わりはないのですが、この本を読むと柳井さんは分析面よりも感性的な部分に重きを置いていることに驚かされました。
人が物を買う行動を起こすのは、その人の感情と条件反射によっているのではないかと考えている。(p.154)
たぶん、科学的・分析的なアプローチと、アートに近い感覚的なアプローチの2つがあって、それが融合するとよい商品ができるのではないだろうか。どちらか片一方がなくなったら成立しないが、どちらかといえばアートに重きがあると思う。理論的・分析的なアプローチだけに頼って商品開発をしても、売れる商品ができあがるとは考えられない。(p. 156)
これはなんとなく共感できます。
いろんな研修でビジネスフレームワークを習ったりしたのですが、みんな同じ手法で考えていたら、いきつくところは結局、同じ結論になってしまったりします。
そこを打破するのはやはりセンスだと思います。ただ、センスを評価するのもやはりセンスが必要なので、経営者の人は理論だけなくアート的な感覚を磨くのが重要なのでしょう。
まとめ
日本を代表する経営者が書いた貴重な本だと思います。この本から得るものは人それぞれだと思いますが、人づてに聞いただけでは分からなかった柳井さん自身の考えを知ることができて、読み応えがありました。アパレル業界に興味のない人でも、オススメの一冊です。
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